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2026/10/27 20:50

微生物が失われる意味と、潮の満ち引きから着想した輸送方法
REEF JOURNAL Vol.03

Aqua h × SORAAI


はじめに|私たちが届けたいのは、ただの石ではない。

「ライブロックは、時間が経てばどれも同じなのか?」

「なぜAqua hは、採取後の鮮度や輸送方法にまでこだわるのか?」

前回の記事では、天然ライブロックに存在する微生物や小さな生物の世界をご紹介しました。

今回は、Aqua hがライブロックの鮮度と輸送方法にこだわる理由について、科学的な研究と私たち自身の考察を交えながらお伝えします。

私たちが届けたいのは、単なる石ではありません。

自然が育んできた、小さな生態系の可能性です。


01|ライブロックの価値は、目に見えない部分にある。

天然ライブロックには、細菌や古細菌、藻類、小型の生物などが付着している可能性があります。

そして、岩の表面と内部では、光、水流、酸素などの環境が異なる場合があります。

酸素が届きやすい場所。

水の交換が緩やかな場所。

光が届きにくい場所。

こうした環境の違いが、多様な微生物の生息場所をつくります。

Ricciら(2023)の研究では、サンゴ骨格内部で深さによって酸素環境や微生物群集が異なることが報告されています。

ただし、サンゴ骨格の研究結果をすべてのライブロックにそのまま当てはめることはできません。

それでも、石灰質基質の内部環境に注目することは、ライブロックの価値を理解するうえで重要だと考えています。


02|微生物が失われることは、何を意味するのか?

水槽にとって重要なのは、単純なバクテリアの数だけではありません。

どのような微生物が存在し、どのような働きをしているか。

そして、それらがどのような環境で活動しているか。

この組み合わせが重要です。

例えば、海水環境ではアンモニア酸化に関わる古細菌や細菌、亜硝酸酸化に関わる細菌などが知られています。

輸送や保管によって微生物群集が変化すれば、物質循環にも変化が生じる可能性があります。

一方で、ある微生物が減少しても、別の微生物が似た機能を担う場合もあります。

そのため、微生物が失われたからといって、必ず濾過能力が低下するとは限りません。

2019年のBikらの研究でも、海水水槽にライブロックを導入した後、微生物群集が時間とともに変化する様子が調べられています。

Aqua hが考えるのは、自然界で形成された微生物群集を、輸送や保管の過程で必要以上に変化させない方法はないかということです。


03|「鮮度が命」と考える理由。

ライブロックの鮮度は、採取からの日数だけで決まるものではありません。

採取後の温度、酸素、水分、保管状態なども重要です。

付着生物が死滅すれば、有機物の分解によってアンモニアなどが発生する場合があります。

また、乾燥や高温などの環境変化によって、付着生物に負担がかかる可能性もあります。

つまり、水揚げ直後であれば必ず高品質というわけではありません。

採取からお客様の水槽に届くまで、どのように扱われたか。

私たちは、そこにこだわっています。


04|なぜ海水を満たして発送しないのか?

Aqua hでは、ライブロックの発送に海水で湿らせた新聞紙を使用しています。

この方法には、私たちなりの考えがあります。

海水を満たした密閉袋では、輸送中の呼吸や有機物分解によって溶存酸素や水質が変化する可能性があります。

また、輸送中の揺れによって、岩の周囲の水の動きが変わる場合もあります。

私たちは、こうした変化が岩の微小環境に与える影響に注目しています。

ただし、海水輸送が必ず微生物に悪影響を与えるわけではありません。

また、海水を満たした輸送によって岩の内部が酸素過剰になると証明されているわけでもありません。

Aqua hでは、輸送中の環境変化を考慮するための選択肢として、湿潤輸送を採用しています。


05|海水で湿らせた新聞紙。その発想は潮の満ち引きから。

自然の海には、満潮時には海水に浸かり、干潮時には空気に触れる場所があります。

潮間帯と呼ばれる環境です。

潮間帯に生息する生物の中には、一時的な干出に適応しているものも存在します。

Aqua hでは、この自然現象に着目しました。

海水を大量に同封するのではなく、岩の表面を湿った状態に保ちながら輸送する。

これが現在採用している方法です。

ただし、すべてのライブロックが潮間帯由来とは限りません。

常時水没している場所の生物にとっては、空気への露出が負担になる可能性があります。

また、湿潤輸送が水中輸送より微生物の生存率を高めると実証されているわけではありません。

潮の満ち引きは、私たちが輸送方法を考えるうえでのヒントです。

その有効性については、今後も検証していく必要があると考えています。


06|浅場と深場では、何が違うのか?

海の環境は、水深によっても変化します。

浅場では光が届きやすく、波や潮流の影響を受けやすい場所があります。

深場では光が減少し、水温や酸素、栄養塩の分布も変化します。

ただし、浅場が必ず低栄養塩、深場が必ず高栄養塩になるわけではありません。

海流、季節、地形などによって条件は異なります。

私たちは、こうした環境の違いがライブロックに付着する微生物群集にも関係している可能性に注目しています。


07|一つひとつ手に取る。それがAqua hの選別。

Aqua hでは、ライブロックを重量や見た目だけで選別していません。

一つひとつ手に取り、状態を確認しています。

不要な付着物がないか。

腐敗を疑うような異臭がないか。

明らかに状態が悪化している部分がないか。

輸送に適した状態であるか。

こうした点を確認し、当店の判断基準に合ったものだけを販売対象としています。

もちろん、外観やにおいだけで微生物の種類や安全性を完全に判断することはできません。

それでも、実際に手に取って確認する工程を大切にしています。


結論|鮮度とは、生命への向き合い方。

Aqua hがライブロックの鮮度にこだわる理由。

それは、単に新しい石を販売したいからではありません。

そこに存在する微生物や小さな生物を、できる限り大切に扱いたいからです。

採取後の管理。

一つひとつの選別。

輸送方法への工夫。

その積み重ねが、Aqua hの品質管理につながっています。

ただし、現在の方法が科学的に最善であると証明されたわけではありません。

だからこそ、今後も研究と観察を続けていきたいと考えています。

私たちが届けたいのは、石ではない。自然が育んだ生命の可能性です。

次回のVol.04では、天然ライブロッククラッシュの活用方法や、微生物環境がサンゴ飼育に持つ可能性について、さらに詳しく考えていきます。

Aqua h × SORAAI
SUSTAINABLE REEF LIFE


参考文献

Ricci et al. (2023)
DOI: 10.1111/1462-2920.16369

Bik et al. (2019)
DOI: 10.1128/mSphere.00043-19

Könneke et al. (2005)
DOI: 10.1038/nature03911

※本記事にはAqua hの管理経験に基づく考察が含まれます。湿潤輸送の優位性や、今回の商品に含まれる微生物の種類を実証したものではありません。

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